【読書】増補版 煩悩の文法 定延利之著
久しぶりの投稿。 新宿西口のブックファーストでふと気になったことから、手に取ってみて、
中身が面白かったので即買ってしまったこの本。
煩悩の文法―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 (わたしたちのことばを考える)
- 作者: 定延利之
- 出版社/メーカー: 凡人社
- 発売日: 2016/12/10
- メディア: 単行本
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本との出会いは不思議なもので、たまたまちょうどその時考えているテーマを、
あえて拾っているのか、それとも偶然拾ってしまうのか。
日本語の仕組みを研究する言語学者の方が書かれていて、「認知モデル」についての言及もあり、
つまらない日本語の文法研究とは大きく異なる、「体験を語る」ときの、
日本語の文法の面白さが紹介されています。
著者は「モノ」と「デキゴト」を区別するのが、日本語である、と述べるところから始まり、
「モノ」について語るはずが「デキゴト」になって語られてしまっている、
例えば文中では
庭に木がありましたよ。
というのが普通の言い方であり、
庭で木がありましたよ。
というと不自然に思えてしまう反面、
北京で四色ボールペンがありましたよ。
というと自然なのは何故なのか、という問いから論を展開していきます。
その違いとは、「ワクワク型」の体験と、「ヒリヒリ型」の体験については、
「モノ」が「デキゴト」になって語られる、探索される空間と衝撃の大きさを、
文法構造で表現してしまう、そんな日本語の特性をあらわにしています。
最近ずっと関心があるのが、「日本語プログラミング」なのですが、
日本語の語順と、英語の語順の違い、そして、アセンブリ言語の語順を比較したり、
文脈情報を規定して動詞を指定する日本語の書かれ方、
主語を除いて語られても伝わってしまう日本語の特殊性、
など、色々なことを考えている中に、大変刺激的な本でした。
もしよかったらぜひご一読ください。